「あるひ、空に10個の太陽があらわれたンなんだよね。だから、すごく暑くなって、みんなが苦しくなって、生活ができなくなっちゃったンだよね。農作物が枯れちゃって、水も全部なくなった。そのとき、ひとりの力持ち、ホウ・イーという人が出てきて、みんなのために10個の太陽をどうにかしようとした。この人は、弓矢を持って山に登った。
山頂にたどり着いた。しゅっしゅっしゅっしゅーって矢を放った。10個の中9個の太陽を、その弓矢で落とした。
1個の太陽だけ残った。ホウ・イーは、太陽にこう言った。
「今後おまえは、みんなのために、時間通りに昇って時間通りに暮れるんだ。そうしてくれるのならころさない。」その太陽は「うんうんうんうん」と言った。ホウ・イーは英雄になった。
英雄になったホウ・イーには、ひとりの妻がいた。チャン・ウーという名前だった。ホウ・イーは英雄になると、弟子を育てるようになったんだけど、弟子の中にひとり、悪いひとがいたンだよね。
はなしもどって、ホウ・イーは英雄になったよね。太陽をどうにかするために、山に登ったじゃん。その山に住んでいた女神様が、ホウ・イーのことを気に入っていた。気に入っていたので、ひと粒の仙薬をホウ・イーにあげた。この薬を飲めば、不老不死になり、天まで登ることができる。つまり、神様になれる。
ホウ・イーは薬をもらったンだけど、飲むことはしなかった。なぜなら、自分の奥さん、チャン・ウーから離れたくなかったからだ。ホウ・イーはその仙薬をチャン・ウーに保管してもらった。
チャン・ウーが薬を持っていることは、悪い弟子の耳に入った。
旧暦8月15日の夜、悪い弟子は仙薬を奪う計画にでる。その日の夜、ホウ・イーは弟子たちと修業に行くことになっていた。悪い弟子は仮病を使って、ホウ・イーの家に隠れた。
ホウ・イーたちが家を出ると、この悪い弟子はチャン・ウーの部屋に入った。チャン・ウーはこの悪い弟子に仙薬を奪われる前に、自分でその薬を飲んだ。飲んだら急に、体が軽くなり、だんだんと浮いていくなンだよ。浮いて浮いて、月に着いた。チャン・ウーはこれで、月の天女になったンなんだよね。
チャン・ウーが月に行っちゃった。ホウ・イーが家に帰るとチャン・ウーは居なかった。天を仰ぐと、月にチャン・ウーが見えた。」
つ・づ・く
(今朝耳にした伝え話)
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